書名:先史時代の沖縄
副題: 
叢書名:南島文化叢書 25
著者名:安里嗣淳 著
発行日:2011.6.6
ISBN:978-4-8042-0781-0 C3320 \3500E
判型:四六判
頁数:372頁
定価:本体3,500円+税

沖縄先史人の渡来と拡散、交通、サンゴ礁文化を育んだムラの暮らしと交易、公式交渉以前の中国文化との関わり、南琉球と東南アジアの貝斧文化、沖縄旧石器文化の存否問題の展望と与那国海底「遺跡」説の矛盾を考古学研究の成果を用いて論証し、その非科学性を明らかにする。

<主な内容目次>
まえがき
第一部 沖縄先史時代の暮らし
 第一章 沖縄考古学総説
  一 先史沖縄の位置と二つの文化圏
  二 先史遺跡の立地と分布
  三 時期区分(編年)研究の経緯
   1 明治〜昭和前期の先史土器編年研究
   2 戦後の先史土器型式編年研究
   3 グスク時代
  四 各時代の概観
   1 旧石器時代と港川人
   2 沖縄諸島(北琉球)の新石器時代
   3 先島(南琉球)の新石器時代
   4 グスク時代
   5 独立琉球王国時代
   6 近世〜現代の沖縄考古学
 第二章 先史沖縄諸島人の交通
  はじめに
  一 先史沖縄諸島の遺跡分布の特徴
  二 「海の回廊」を往来した先史沖縄諸島人
  三 石器の材料(原石)入手
  四 内陸部への沢伝い新出−沖縄島中部比謝川水系の交通
  五 「海の回廊」と「海の壁」
  結び
 第三章 泉と小川…先史沖縄人の居住地選択
  序
  一 水源の種類
   1 沖縄島先史時代遺跡周辺の水源
   2 遺跡と水源の種類
  二 沖縄島中・北部地域の先史遺跡と水源との関係の特徴
  三 居住地選定の最優先条件ではない水源
  四 沖縄島北部海岸地帯の先史遺跡の少なさ
  五 中部中城湾岸地帯の先史遺跡の少なさ
  結び−適応戦略としての居住地域選定
 第四章 沖縄先史時代後期のムラ
  一 ムラのイメージ
   1 サンゴ礁文化
   2 外部世界とのかかわりと良質容器の流通
   3 後期のムラは変化したか
   4 後期の年代幅
  二 ムラの暮らし
   1 ムラのはじまりは?
   2 ムラの軒数と家屋の形
   3 沖縄先史時代後期のムラの立地 サンゴ礁湖(ラグーン)との共生
   4 ムラの水源
   5 ムラの食料
   6 食用植物の管理
  三 外部世界との交渉
   1 九州弥生社会との貝交易
   2 「対応型・受身型」の貝交易
   3 貝交易の対価は鉄(鉄器)か
   4 稲作は導入したか
   5 沖縄後期社会のムラは稲作導入を拒んだ
   6 唐代銭貨「開元通寶」の流布をめぐって
   7 開元通寶は遣唐使がもたらしたのか
   8 ヤコウガイ交易と銭貨
  四 結び
  五 補足−ムラによるサンゴ礁湖の管理と統率者階層形成の胎動?
 第五章 沖縄の貝塚−サンゴ礁文化の諸相−
  はじめに
  一 遺跡分布の特色
   1 海岸地域への居住地選択
   2 サンゴ礁湖に対応する居住地(貝塚等)の立地
   3 内陸部への居住の場合
  二 通行圏・文化圏
  三 貝塚の内容
   1 漁法をめぐって
   2 貝器文化
   3 陸性食糧残滓
  四 魚介獣骨を残さない(貝塚を形成しない)時期
  五 自然堆積の貝塚
  六 沖縄先史人は稲作を拒んだか?
  七 グスク時代の貝塚
  八 南琉球の貝塚と貝文化
  九 南北琉球先史時代に共通する貝・魚歯製品
第二部 さまよえる港川人
 第一章 南東の人と文化の起源をめぐって
  一 「ウチナーンチュはいつから日本人になったのですか?」
  二 期待されてきた結論
   「起源」にはいくつかある
   追記
 第二章 沖縄の旧石器時代
  はじめに
  一 調査研究史のあらまし
   1 徳永重康・直良信夫の中国顧郷屯における骨牙製品発掘と沖縄との関連
   2 徳永重康らの伊江島カダ原洞穴シカ化石骨調査
   3 直良信夫の「叉状骨器」命名
   4 山下町第一洞穴遺跡における鹿化石製品の発見
   5 伊江島ゴヘズ洞穴の鹿化石製品発見
   6 叉状骨器・斧刃状角器の用途の推定
   7 海外の類例との比較研究
  二 シカ骨角器非人口品説の展開
   1 裴文中の「非人口破砕之骨化石」論文
   2 裴文中の非人口砕骨化石再論(1960)
   3 加藤晋平の擬骨器説の展開
   4 擬骨器説への反応
   5 馬毛島の現生ニホンジカの骨角食行動の発見
  三 奄美群島における「旧石器」の発見
  四 山下町第一洞穴遺跡発見の石塊の再評価
  おわりに
 第三章 前期旧石器捏造事件と沖縄の旧石器研究
  一 「あなたは大丈夫ですか?」
  二 異端が多数派に…「当時の地層からの出土」を見せつけられて
  三 「前期旧石器」を認めないのが異端扱いに
  四 沖縄の「旧石器時代」をどう扱うか?
  五 「沖縄での旧石器発見を手伝いましょうか?」
  六 実は存在自体があいまいな沖縄の旧石器時代文化
第三部 二つの琉球からひとつの琉球へ
 第一章 中国唐代銭貨「開元通寶」と琉球圏の形成
  はじめに 
  一 先史琉球の二つの文化圏から琉球圏へ
  二 先史琉球列島における共通の考古資料
   1 「開元通寶」を出土する遺跡
   2 スイジガイ突起部加工品を出土する遺跡
  三 北から南への展開
  結び
 第二章 公式交渉開始以前の琉球と中国
  はじめに
  一 新石器時代
  二 グスク時代
  三 十四世紀半ば以前の琉球における中国産文物の出土
   1 明刀銭
   2 五銖銭
   3 トウテツ(饕餮)紋様の貝札(符)
   4 漢式鏃
   5 開元通寶
   6 中国磁器の伝搬と、非中国産陶器の流通
  結び 中国との直接交渉はあったか?
第四部 琉球と南方世界との交流
 第一章 南琉球先史文化圏における無土器新石器期の位置
  はじめに
  一 いわゆる早稲田編年について
  二 石垣島大田原遺跡・神田貝塚の層序関係
  三 波照間島下田原貝塚、大泊浜貝塚の層序関係
  四 中国唐代銭貨「開元通寶」の共伴
  五 白磁、須恵器、滑石製品の共伴
  六 鉄製品の共伴
  七 年代測定資料
  八 石器(とくに石斧)の変化
  むすび
 第二章 沖縄のシャコガイ製貝斧概観
  はじめに
  一 「貝斧」の用語
  二 貝斧の発見例
   1 八重山諸島
   2 宮古諸島
   3 沖縄諸島圏
   4 沖縄以外の地域
  三 貝斧をめぐるいくつかの課題
   1 分類
   2 発見状況
  結び 貝斧の系譜
 第三章 南琉球の原始世界
  はじめに
  一 南琉球圏の原始文化
   1 前期
   2 後期
  二 シャコガイ製貝斧
   1 利用部位による貝斧の二つの型
   2 南琉球の貝斧の型
  三 南琉球の貝斧文化の源流
   1 前期との文化的関連
   2 ミクロネシアの貝斧
   3 フィリピンの貝斧
  四 再び琉球の貝斧について
  むすび−貝斧の道
 第四章 貝斧文化の発生と展開
  はじめに
   1 南琉球列島とフィリピンの貝斧の類似性
   2 バロボク岩陰遺跡の調査
   3 貝斧の発生と展開をめぐって
  おわりに
第五部 与那国島近海「海底遺跡」説批判
 第一章 与那国島近海「海底遺跡」説批判
  はじめに
   1 「海底遺跡もどき」の特質と批判の方法
   2 海底遺跡もどきに加工の痕跡、文化的造形が認められるか
   3 与那国島と周辺地域の石造文化
   4 南琉球の石造文化
   5 台湾の石造文化
   6 フィリピンの石造文化
   7 沖縄のグスク
   8 海底遺跡もどきの推定年代をめぐって
  おわりに 時空を越えた議論への疑問
 第二章 与那国海底遺跡説を主張する新嵩喜八郎氏への回答
あとがき
初出一覧
文献
索引
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